創立前史 第3章 青空の下の入学式
2022年創立80周年★小野高校史100年
青空の下の入学式
小野新町・滝根町・飯豊村・夏井村 組合立田村農蚕学校 創立
二瓶 晃一 第37期 (昭和54年度卒)
本格的「実業学校」の実現に向けて
昭和16年(1941年)6月11日付、福島県指令蚕を以て指令相成りたる県立蚕業試験場小野新町支場庁舎の一部を、本町外三ヶ村(実際には前年の昭和15年に滝根村は町制施行し滝根町となっていた)の共立を以て、甲種農蚕学校設立のため移動改修に要する一切の経費は組合町村に於て負担し、県費支弁は之を請願せざるものとす。
右理由の保証書を県に提出するものとす。
昭和16年8月2日 専決
田村郡小野新町長 矢吹 佐一
小野新町実業学校を設立した昭和8年(1933年)当時は助役であった矢吹佐一は、この時、小野新町の町長であった。この専決事項を審議する昭和16年(1941年)の町会においては
議長、書記をして報告案を朗読せしめ、急速に申請を要する本校設立願に必要とする旨、其筋よりの要求に依り、8月2日専決したるものなることを朗読したるに、満場異議なく原案に承認一致したるを以て、議長は直ちに承認したる旨宣告す。
議長 小野新町長 矢吹 佐一
とあり、ついに念願であった、いわゆる甲種中等学校設立にむけて小野新町の町会は満場一致でこれを承認した。
この保証書に、小野新町の他、滝根町・飯豊村・夏井村の合計2町2ヶ村の各町村とも満場一致で可決、承認した。ここに組合立・福島県田村農蚕学校の創立が動き正式に動きだしたのである。
昭和16年12月20日、小野新町の町会議事録には
小野新町・滝根町・飯豊村農蚕学校組合規約設立議案として、小野新町・滝根町・飯豊村農蚕学校維持存続のため、本町は滝根町・飯豊村を以て組合規約を設定すること左の如し
一、小野新町・滝根町・飯豊村農蚕学校組合規約
昭和16年12月20日 提出
仝 議決
小野新町長 矢吹 佐一
とあり、8月2日の県に対する保証書には満場一致で同意していた夏井村であったが、田村農蚕学校創設に際しては、何等かの都合で一足遅れて組合参加をしたようだ。
日本をとりまく国際環境は激動の時代を迎え、12月8日には大東亜戦争(太平洋戦争)が開戦となっていた。
昭和17年2月8日付 福島民報の記事
農蚕学校開校 小野新町・滝根・飯豊・夏井 二町二ヶ村の組合立甲種
田村農蚕学校は、4月の新学期から1年100名、2年100名を収容開校する事になった。
建築の関係から遅れると思われた文部省認可が20日前後には発令到着の内報を得たので、組合は16日議員選挙(定員、小野新町・滝根各6名、飯豊・夏井各4名計20名)を行い、組合の構成を急ぎ、4月開校に違算なきを期す事になった。
尚、200名の生徒は、2年生は現在の小野新町実業学校1・2年生並に他校からの転向生を編入試験で収容。組合議員の選挙は、各町村会議員が選挙権を持ち、被選挙権は各町村公民が、即ち選挙は町村会議員に依って行われ、亦、組合議員の任期は各町村会議員の任期と同一になっているので、從って今年は5月乃至6月には亦改選を見るわけである。
以上が福島民報の記事である。創立後の田村農蚕学校の管理者は、地元の小野新町長が担当することとし、記事にあるように組合立学校の運営にあたる組合議員が各町村から選出された。
昭和17年2月23日付で、橋田邦彦文部大臣より、矢吹佐一 氏にかわり小野新町長となった秋元八郎 氏に「福島県田村農蚕学校」の設立を認可する旨の公文書が届けられた。
学校の構成は、農蚕科・就業年限3ヶ年、1学年100名 計300名。
入学資格・国民学校高等科卒程度 男子
21年目の悲願
昭和17年(1942年)の小野新町の事務報告によると、田村農蚕学校の設立について次のように書かれている。
田村・石川・石城・双葉各農山村地方の恒久的振興を計らんがため、之が維持推進力たるべき実践的気魄を有する皇国農村の中堅人物を育成し、現下農村の重大なる国家的要請に即応する青少年たらしむる人物育成の目的の下に、本春4月より開校せんと、蚕業試験場内に田村農蚕学校を建設し、地方振興を図らんとし、組合校を設立したりしために、本町に於て一切事務をべん掌したり。
大正10年(1921年)の三春町との旧制中学校誘致に敗れ、翌、大正11年(1922年)設立された福島県立蚕業試験場講習部。その時、わずか30名の女子を教育する場であった講習部から、ついに悲願であた男子中等学校として、300名を収容する甲種実業学校の設立に至った。中学校誘致から21年、蚕業講習部設立から20年の月日を要した。一つの生命が誕生し成人となるこの期間を要して、小野新町方部の中学校設立の夢は、紆余曲折がありながら結実する事となったのである。
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