小野高漢詩校歌

創立前史  第1章 もう一つの創立記念日 その7

県立養蚕講習部の設置へ

 さらに、田村中学の小野新町への誘致運動が激しくなる頃、大正10年(1921年)11月9日付の福島民報に、「原蚕種製造所事業の充実」と題して、次のような記事が載った。

 

「小野新町支所に於ける掃立蟻量を増加せんとするため、之に伴う諸費を増加計上せり。又、同支所内に蚕業講習所を開始せんとす。其所要建物及設備に田村郡よりの寄附を採納すべく講習所に要する経費を計上したり。

 

「県立」の福島県原産種製造所小野新町支所に「講習所」を開始し、その建物・設備に田村「郡」からの寄附をおこなう、という趣旨のものだが、これは明らかに、激化する小野新町への田村中学誘致運動に対し沈静化を図るべく、郡が小野新町に対し「アメ」を用意してきた事を意味する。

 

 それに対して、前述したとおり、草野 良八 県議は「県は之を以て、中学校と変換の意味を以て、地方民を慰撫する方針なりやも知れざるが」と述べてけん制するとともに、「僅か30名の女子を教育する養蚕講習所と数の子弟を教育すべき中学校は変換し得られず」と一刀両断している。

 大正2年の田村蚕業講習所の募集は、男女あわせて50名であったのだが、草野 良八 県議が「僅か30名の女子」と述べているという事は、その時点で三春町の講習所がその規模であったのか、または県から提示されていた規模がその程度であったのかは資料がないので不明であるが、その後の規模から考えて、すでにこの時点で「女子30名」という規模は確定していたのかもしれない。

 しかし、結果として小野新町方部は三春町との「田村中学校」誘致合戦に敗れ、この県立「養蚕講習部」が、小野新町方部に旧制中学を誘致運動をした唯一の「証」として残ったのだった。

大正11年(1922年)10月1日、もう一つの「創立記念日」

 

 僅か「女子30名」、されど「女子30名」。これは正に小野新町方部における、本格的な「実業」「中等教育」の始まりだった。確かにこの「講習部」は、中学校令や実業学校令などによる文科省令による学校ではない。だから、正式な小野高校の歴史からは外されていて創立の年とはされていないのだが、この女子30名の学び舎が後の「田村農蚕学校」の礎になった事は紛れもない事実だ。講習部校舎が、20年後に設立される「田村農蚕学校(現在の福島県立小野高等学校)の校舎となった事は、最も象徴的な事だろう。

▲昭和15年度の講習部の生徒達。玄関の場所は、現在の同窓会館前グランド付近

翌、昭和16年度を最後に、この場所は「田村農蚕学校」へと移管される。

▲昭和19年の田村農蚕学校の正門歩哨の服装点検を受けて入門

蚕業講習部の施設は、そのまま創立時田村農蚕学校の施設として使われた。

▲田農時代も(左)女子部の教室として使用された講習部時代の建物

 校舎の件では、田村中学校と奇妙な、ある意味で必然的な「因縁」もある。新たに田村郡の1校だけ設置された県立中学校の場所は、前述した郡立「田村養蚕講習所」の後地であり、それは現在の田村高校の場所でもある。

実質的には、明治41年(1908年)に設置されたこの歴史ある講習所が小野新町に移り、県立「養蚕講習所」となった事を考えれば、その歴史(小野高創立まで34年)さえも現在の小野高校は引き継いでいる事になる。

 県立中学校の誘致の夢は破れたが、その「夢」は一筋の「希望」を残してくれたのだ。

 

大正11年(1922年)10月1日

 

 この日、福島県立原産種製造所小野新町支所・講習部が設立された。大正10年(1921年)10月23日に新開座で決起集会が開催されてから約1年後、互いに旧制中学校設立・誘致で争った三春町に「田村中学校」が開校する大正12年(1923年)4月15日より半年前の事だった。前述したように、法令によりすぐ「福島県立養蚕試験場小野新町支場・講習部」となり、それは小野新町・滝根町・飯豊村・夏井村 2町2村組合立「 田村農蚕学校」が設立されるまで続く。

 平成34年(2022年)、福島県立小野高等学校は設立80周年を迎える。しかし、同時にその時、小野高校は「100年」の歴史とその物語を持つ高校となるのである。

 県立高校が地域にある事は、「あたりまえ」の事ではない。私達はその事をしっかりと胸に刻みながら、歴史を受け止め未来に繋いで行かなくてはならない。

▲大正14年・熱心に授業を受ける講習部の女生徒達。

ここに現在の小野高等学校の原点がある

(第1章 もう一つの創立記念日 終り)

 

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